アメリカへの到着

アメリカに入国してからはUSDAの監視下に置かれ、USDAが認定する隔離厩舎で過ごすことになります。厩務員が馬の世話をする際または調教のために馬房から馬を出す際は、USDA職員またはUSDA公認の獣医師の立ち合いのもと実施されます。

滞在する検疫厩舎によって(または現場のUSDA職員の判断で)、厩舎が施錠(シール)される箇所は異なります(ニューヨーク州は特に厳しい施錠ルールを設けています)。競馬場によっては、24時間体制で警備員を配置し施錠していることをチェックします。厩舎が施錠されている場合、開錠するためにはUSDA職員またはUSDA公認の獣医師が立ち会わなければいけません。

USDA職員が厩舎を施錠することを命じた場合、担当の獣医師が厩舎に立ち会える時間と厩務員が馬の世話や治療をしたい時間が必ずしも合わない可能性があります。このような事態があった時のために、複数名の獣医師の連絡先をおさえておくことをおすすめします(過去にも、日本馬を担当していたが滞在中に職務を辞任した獣医師もいました)。控えの公認獣医師がいない場合、(特にニューヨーク州などは)USDAは厩舎をロックして、厩舎で作業できる時間はUSDA担当者のスケジュールに合わせなければいけなくなります。このような事態に陥った場合、馬はUSDAの管理下にあるため、(同)まるがいレーシング、輸送会社、競馬場は一切の責任を負うことはできません。

現在、日本政府、USDA、JRA間でCEM検査の免除に向けて調整中です。免除に向けて交渉は進んでいますが、いつから免除になるかはまだわかりません。免除されれば、日本の出国21日前およびアメリカ到着時のスワブ検査のみで済みます。その後、48時間の着地検疫期間が済めば、常時監視されることもなくなりますし、アメリカ複数回出走を予定している場合は、現地のアメリカ馬と一緒に調教ができるようになる可能性があります。規定が変更され次第、書面にてご案内いたします。

着陸

通常、遠征馬の担当厩務員には、馬匹を輸送機から降ろし、馬運車に積み込む作業を担うことが許されます。その際には、空港までご自身のパスポートを忘れずに携行してください。また、担当者には、カーゴエリアから検疫場到着までの間、白色の専用衣服を纏うことが義務付けられております。

検疫所に到着後

米国のどこに着陸するか、および競馬場で利用できる検疫施設によっては、目的地の空港に近い馬の検疫厩舎で 42-48時間の検疫期間が行われる場合があります。

着地検疫厩舎に到着して下記の治療と検査が完了した後、42-48時間の隔離検疫期間に入ります。この期間中は、事前にUSDAより承認されたスタッフ2名までが馬に接することができます(事前の承認手続きは輸送会社が行います)。

隔離検疫期間中は常時、競馬場以外のUSDAが認定する隔離厩舎に入厩する場合は、馬を見る前に、特別な検疫服に着替える必要があります。 厩舎エリアを出るときは、シャワーを浴びる必要があります。

競馬場内ののUSDAが認定する隔離厩舎に入厩する場合は白衣を着用しなくてはなりません。(ブリーダーズカップなど)

検疫厩舎到着時、USDA公認獣医師は採血および検温を行います。補液が必要な場合、USDAの事前承認を得たうえで、公認獣医師が投与します。体温が下がる効果のある治療、薬物は認められていません。そのような薬物を投与した場合、隔離検疫期間から解放されるのが遅延することもあります。ただし、馬の体温が急激に上がっていて輸送熱の疑いがある場合は、このような治療が必要であることは理解されています。

着地検疫を無事完了させるためには、以下の条件を満たさなければいけません。

1.     最低でも42時間の隔離検疫期間を完了させること

2.     媾疫、馬鼻疽、ピロプラズマ病、馬伝染性貧血の検査が陰性であること

3.     隔離検疫の終わりから遡って24時間以内に3度検温し、全て平温であること(華氏104度以下)

朝夕の検温表は配布されます。体温計は支給されますが、ご自身のものを使いたい場合は持参可能です。

アメリカ国内に電気器具を持ち込む場合、到着してから地方当局が使用の許可を承認するのに少しの間、保管される場合がありますが、使用方法についての案内とともに必ず返却されます(到着前に事前に承認を得ることは可能です。器具の写真と使用用途をお知らせください)。

42時間の着地検疫期間中、厩舎エリア内に引き運動をできる場所があれば運動は可能です(乗り運動をするスペースがあれば、それも可能)。ただし、厩舎エリアを出ることはできません。厩舎エリア内のスペースは各競馬場の施設によって異なります。

馬の個体確認のために写真撮影および馬体の旋毛の採徴がされて、それらの情報は米ジョッキークラブに送られます。これらの写真撮影および個体確認は輸送会社の代理人によって行われ、米ジョッキークラブに送ります。

輸送会社はケンタッキーにある米ジョッキークラブに馬のパスポートを送ります。

日本から米ジョッキークラブに直接送付される場合もあります。輸送会社に確認をしてください。

 輸送会社はUSJCの規定に基づき輸入登録手続きをします。USJCは登録書類を出走するレースの前に競馬場に送ります(競馬に出走するために必要な書類です)。また、USJCは馬のパスポートを競馬場に返却しますので、競馬場の事務所で引き取りにいってそのまま馬が日本に帰国するまで保管しておいてください。USJCの登録書類は競馬場の事務所にそのまま保管され、競馬が終わり次第、再びUSJCに戻され出国(帰国)手続きのために使われます。

着地検疫完了後、入国に必要だった日本の健康診断書、輸出許可証、USDAの輸入健康診断書がレーシングマネージャーに戻されます。これらは大切に保管し、輸送会社のプログルーム(馬と帯同して帰国する人)に渡してください。

隔離検疫期間が目的地の競馬場になかった場合は、検疫が完了したら競馬場に移動できます。

隔離検疫期間終了後は、USDA担当者またはUSDA公認獣医師の監視のもと調教を開始していただけます。

当ガイドブックの輸入・輸出に関する情報はIRT(International Racehorse Transportation)社が提供しています。輸出入に関するお問い合わせは以下の日本担当者までお願いします。IRT担当者:廣瀬 徹人(ヒロセ テツヒト)携帯:+61 411 701 708 メール:thirose@irt.com