米国への遠征馬の準備

海外遠征は決して安易にできるものではないですし、苦労されるケースが多いです。ドバイレーシングクラブ、香港ジョッキークラブ、ブリーダーズカップなど世界中から遠征馬を受け入れる体制が整っている主催者とは反対に、アメリカの競馬場の多くは手間のかかる手続き等、重労働を遠征する陣営に委ねることがあります。(同)まるがいレーシングと指定される遠征サポート会社でこれらの手間は簡単に解決できますが、ここではあなたとあなたのレーシングマネージャー(エージェント)が米国遠征する前に知っておいていただきたいことを記載しておきます。

  • ブリーダーズカップを除き、競馬場(主催者)と遠征補助金に関する交渉は必要です。

  • 遠征する数か月前に、あなたの代理で(同)まるがいレーシングが競馬場と交渉します。

  • レースまたは競馬場によって支給される補助内容が異なることは予めご承知おきください。補助内容の変更や競馬場によっての補助内容の差は(同)まるがいレーシングが決めるものではなく、一切の責任を負うことができません。

  • 年度ごと、レースごとに遠征補助については交渉をする必要があります。前年度と同様の補助が支給されるとは限りません。

米国への遠征期間の制限

日本馬は検疫の規定上、一定期間内に日本に帰国する条件があり、定められた期間を過ぎるとペナルティーが科されます。

日本馬は国外のレースに出走するために90日間の出国許可が与えられています。90日以内に帰国しなかった場合は、米国出発前に1週間の出国検疫することになり、日本に帰国してからも90-120日間の着地検疫期間があります。ご注意ください。

日本馬はアメリカにいる期間、90日間の馬伝染性子宮炎(Contagious Equine Metritis - CEM)検査が免除されます。この免除は、米国に長期間滞在させる予定の牝馬には影響はありませんが、牡馬には大きな影響があります。

現在のCEMの規定では、牡馬は2頭以上の繁殖に種付けをしないと90日以上の滞在が許可されていません。米国に到着してから90日以内に帰国するよう日程を組んでください。

90日が過ぎると、スワブの検査などを受けた後、牝馬は他の馬がいる環境に開放することができます。日本に帰国する場合は1カ月の出国検疫を受ける必要があります。日本を出国してから規定の90日を過ぎているので、帰国後は90-120日間の着地検疫を受けることとなります。

日本は現在、CEM免除国として認定されていて、日本を出発する前にCEM免除許可証を受理しておく必要があります。この許可証はUSDAが発行するものであり、輸送会社が手配します。この許可証があることで、CEM検疫を受けずにアメリカに入国、出走することが可能になります(通常は、2歳以上牝馬は18日、牡馬は30日間の検疫)。ただし、アメリカに入国してからはUSDAの監視下に置かれ、USDAが認定する隔離厩舎で過ごすことになります。厩務員が馬の世話をする際または調教のために馬房から馬を出す際は、USDA職員またはUSDA公認の獣医師の立ち合いのもと実施されます。

出発の前の準備

輸送会社を選定し、馬の輸送に必要な事前準備を開始してください。アメリカ遠征を支援してくれる輸送会社が複数あります。(同)まるがいレーシングの見積書はいつもIRTから頼みますが、あなたが選定した輸送会社と協力していきます。指定の業者がなければ(同)まるがいレーシングから推薦することも可能です。

あなたがコンタクトを取るべき輸送会社は、あなたが懇意にしている日本の輸送会社です。あなたからの接触を受けた後、彼らは国際輸送会社とその後の段取りを整え、然るべく必要な情報をあなたへとフィードバックしてくれます。

なお、輸送会社に対しては、あなたが米国に持ち込むことを予定しているすべてのモノを通知してください。これは、彼らが輸出入に必要な書類作成業務を遂行する上で大変重要な事柄です。

飼料およびサプリ

  • 輸送会社と飼料の輸出についても相談してください。アメリカに飼料を輸出するのは安易ではありませんが、1レースのみに出走する遠征であれば少量の飼料を持ち込む手段はあります。

  •  1レース以上滞在する予定の場合、輸送した飼料と似た餌を現地で調達することもできます。餌を選りすぐりする馬でなければ、現地調達をおすすめします。

  • アメリカに持ち込みたい飼料が欧州から取り寄せているものであれば、同じ飼料を欧州からアメリカに直接輸送してもらえるケースが多いですし、日本からアメリカに持ち込むより手続きが簡易且つ安心です。

  • アメリカに輸送したい飼料等の一覧を輸送会社から聞かれます。輸送会社はUSDA規則のもと、リスト内で持ち込めるもの・込めないものを教えてくれます。

    • 飼葉、サプリメントなどを持ち込む場合、オリジナルのパッケージに梱包されている必要があります。オリジナルのパッケージに入っていないものを持ち込んだ場合は、州によっては罰金の対象になる可能性があります(NYRAなど)。JRFから密封パッケージされる前の小サイズの飼料を輸出する場合、そのパッケージのどこかに商品名(サプリ名)だけではなく成分の一覧を必ず記載していただくようお願いしてください。

      • 飼葉またはサプリメントの成分一覧を英語で記載した書類などを持参していただけると安心です。

      • サプリメントなどは再利用したペットボトル、ジップロック、タッパーウェアなど正式なラベルが貼っていない容器に入れて持ち込まないでください。見つからない場合もありますが、見つかった場合は没収され罰金の対象になる可能性もあります。

ドバイやサウジアラビアと異なり、米国では、調教師ならびにその陣営自らが、飼料や薬物、また、サプリメント等に関して何が使用を許可されていて、何がそうではないのかを熟知していることが求められます。しかしながら、まるがいレーシングでは、あなたが持ち込んだ品が許可された物質であるか否かを、当局を通じて確認するサービスを提供しております。つきましては、原料の詳細が英語で記された一覧を忘れずにご提供ください。これら英語による一覧は、あなたが普段お使いの飼料会社、もしくは獣医師に作成してもらってください。一例として、まるがいレーシングがドバイ遠征時に作成した書類の写真を添付いたしますので、参考になさってください。また、薬品やサプリメント類においては、出走当日から逆算して定められた日数までに使用を中止する必要のある品物も存在しますので、それらの使用停止日にもご留意ください。

出国前ワクチンおよび検疫

  • 輸送会社はJRAに連絡し、出国前に必要な準備を始めます。

  •  州によっては、競馬場到着前に必須としている特定のワクチンがあります。これは州、競馬場によって異なります。これらは必ず確認してください。多くのワクチンはアメリカ到着前2-3週間前までに接種しておく必要があります。

    • アメリカ馬は、自国内の全競馬場で出走できるためのEHV-1ワクチンを、出走する競馬場到着14日以上前、60日以内に接種しています。競馬場によって必須条件ではないところもありますが、あなたが指定する輸送会社はEHV-1ワクチン接種の確認を求めてくるはずです。仮に必須とされていない競馬場で出走する予定でも、連戦することになった場合、2走目以降の競馬場がEHV-1ワクチンを必須条件とする可能性もあります。

    • ケンタッキー州へ入域するすべてのウマは、入域日から遡って12ヶ月以内に取得された馬伝染性貧血 (EIA) に対する陰性証明書の携行が義務付けられています。

    • 遠征する馬の馬インフルエンザ接種記録を確認してください(4~6週間間隔で2回の基礎免疫接種、またはアメリカから再輸出される6か月以内の補強接種)

医療記録

以下を明示した、過去30日間の医療・投薬記録を英語にてご提供してください:

薬品名、活性成分名、投薬量、投薬方法(経口・注射等)、投薬日

例 Omeprazol, GastroGard, 1 tube, oral, 9/1/2023

例 Lactated Ringers, 5L, IV, 9/1/2023

例 Vitamin B12 Complex, 10cc, IV, 9/1/2023

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HISAは馬の最新のワクチン情報がHISAのウェブサイトにアップロードが必要があります。 このデータはすべて馬のパスポートの中にあります(健康手帳)ので、JAIRSの人か輸送会社がケイトにデータを渡すようにしてください。

  • Coggins Test (馬伝染性貧血の免疫拡散検査)(アメリカの入国検疫にする検査)

  • Influenza Vaccine (馬インフルエンザワクチン)

  • Rhinopneumonitis Vaccine (鼻肺炎ワクチン)

  • Encephalitis Vaccine (日本脳炎ワクチン)

  • Rabies Vaccine (狂犬病ワクチン)*

  • Tetanus Vaccine (破傷風ワクチン)*

 * 狂犬病と破傷風のワクチンを馬に投与していない場合は、ワクチン免除申請が行われます。 これらのワクチンは一般的には投与されないため、米国に一時的に滞在する場合はワクチンを免除してもまったく問題ありません。 ただし、3 か月を超えて馬を米国に留めておくことにした場合は、その2つワクチンが必要になります。

荷造り

すべての荷物には下記のラベル付けをお願いします。なお、ラベルはすべて (米国にて荷物取り扱い業務に従事する現地スタッフが読めるように) 英語で記入してください。

Trainer Name (調教師名)

Horse Name (馬名)

Flight Number (便名)

Destination or Racetrack (最終目的地:競馬場名)

靴やブーツを含め、梱包するものはすべて清潔であることを確認してください。 すべて外国に輸入されているので、泥がついたり、ボロがついたりすることはできません。 すべての馬用品と個人使用品(ビール、カップ麺、その他のさまざまな食品)は必ず別々に、できれば別のトランクに梱包してください。

ブーツとかボロミのようなものは、米国農務省によって汚れすぎると判断された場合、廃棄される可能性があります。 馬の必需品(特に飼料添加物)が人間の個人的な食べ物と過度に混合されると、それらも廃棄される可能性があります。 お気をつけください。

乾草・飼い葉と水桶・馬房掃除

餌とルーサンとチモシーは輸送会社経由で所有者に請求されます。

一部の競馬場では、水道水を使用する必要があります。場合によっては、ボトル入りの水が提供されます。

シェービングまたは敷き藁が輸送会社経由で所有者に請求されます。なお、使用後の馬房掃除は自らで行ってください。また、そのための道具(フォークやバケット等)は提供されます。水の桶と飼い葉の桶は、主催者側から提供されます。

荷造りのおすすめ

馬着(ラグ)

最近の天気は非常に予測しにくいですが、10 月から 4 月の間に米国に旅行する場合は、馬のためにいくつかの重い馬着(ラグ)を用意することを検討してください。 南州の方にも夜と朝は、10 月の早い時期から 4 月の遅い時期まで寒いことがあります。 ニューヨークでレースをしている場合は、5 月までに重い馬着を持参することを検討してください。

ストールガード

アメリカの馬房は日本の馬房とは違います。 ドアは通常木製です。 一部の競馬場には金属製のドアに変更があり、馬が頭を外に突き出すためのスペースがあるは設置できます。全部のドアが厩務員がストールに出入りするには便利ではありません。ストールガードを持参することをお勧めします。 到着時にストールガードを簡単に取り付けられるように、ストールにはすでにボルトが入っています。 それはあなたの毎日の生活をずっと楽にしてくれます。 持っていない場合は、通常、近くの馬具屋で購入できます。

レース当日に必要なもの

スポンジ(鞍下・腹帯)、ゲルパッド(滑り止め)は調教師の負担です。一部の外国人騎手は独自のスポンジと滑り止めを持っていますが、保証されていません。装鞍所に持っていかないと、レースの前にスペアを探す時間がありません。忘れずに。

競馬場へのお願い

馬房

馬房でのシェービングまたは敷き藁のどちらを希望するかを輸送会社と(同)まるがいレーシングにお知らせください。

米国のほとんどの馬房は、ストールの床として土だけを使用します。 いくつかの競馬場がUSDA認定の検疫厩舎があり、それらにはコンクリートの床があります。土を掘ったり、コンクリートをこすったりしないように、ストール内にゴム製のマットを敷くことをご希望の場合は、輸送会社と(同)まるがいイレーシングにお知らせください。 シェービングか敷き藁を頼む時に、競馬場にもマットの設置を依頼します。

レーシングマネージャー

遠征に際してのレーシングマネージャーは良い考えですが、存在に必要ではありません。任用するか否かは、各遠征関係者の意向に委ねられます。なお、まるがいレーシングは各種の免許発行等と手続き業務(書類仕事)は無料で代行いたしますので、そのことのためにはご自身でレーシングマネージャーを用立てていただく必要はございません。ただし、いつ何時でもあなたの要望に応えてくれるような存在をご所望の場合には、ご自身で任用されることをお勧めいたします。ご留意いただきたのは、まるがいレーシングが、開催や競馬場、それらを運営する組織そのものに雇用されているという事実です。可能な限りのお手伝いはご提供いたしますが、ご要望に応えられないケースがあることも、ご承知おきください。

送中のトラベリンググルームについて

出国前の馬の検査、検疫についてはJRAと輸送会社で調整されます。よって、検査等の予約などは輸送会社が行いますのでご安心ください。輸出前の健康状態検査の後、農林水産省より健康診断書が発行されます。診断書は出発する空港で輸送会社の担当者から機内に帯同するトラベリンググルーム(または航空会社指定のプロフェッショナルグルーム、以下プログルーム)に手渡されます。

輸送中に馬のケアをしてくれるプログルームをつけてもらうよう輸送会社には強く要求することをおすすめします。プログルームは馬の空輸移動に関しては専門家であり、目的地に到着するまであなたの馬に対して最善のケアをしてくれます。

  • 米国行きの貨物便によっては厩舎スタッフが馬と帯同できるフライトもありますが、全てのNCA社のフライトが許可しているわけではありません。事前に輸送会社に確認してください。

  • 担当厩務員が馬と帯同できない場合、馬が米国の検疫厩舎に到着する前に担当厩務員が現地に到着し、受け入れる態勢を整えておく必要があります。

  • プログルームの手配・移動に関しては、輸送会社、マネージャー、またはケイト・ハンター氏がサポートいたします。

  • (公財)ジャパン・スタッドブック・インターナショナルが馬のパスポートを発行します。馬の出国前に発行され、発行手続きは輸送会社が行います。通常、パスポートは馬と一緒にアメリカに移動しますが、ジャパン・スタッドブック・インターナショナルが直接USJCに送付する場合もあります。

ヘルメットおよび保護ベスト

ヘルメットおよび防護ベストについても、同時期に新たな規則が導入されます。使用の許可された道具一式については、一覧をご覧ください。なお、道具のいかなる部分にも手を加えることは許されず、付随するタグやラベルなどもそのままにされている必要があります。

認可されているヘルメット(重要な更新2022年7月1日)

  • アメリカ基準:

    • ASTM F1163

  • ヨーロッパ基準:

    • EN-1384

    • PAS-015

    • VG1

  • オーストラリア/ニュージランド基準:

    • AS/NZS 3838

    • ARB HS 2012

  • Snell Equestrianの基準:

    • Snell 2001

認可されている保護ベスト(重要な更新2022年7月1日)

  • アメリカ基準:

    • ASTM F1781-08

    • ASTM F1937

  • ヨーロッパ基準:

    • BETA:2000 Level 1

    • EN 13158:2000 Level 1

  • Shoe and Allied Trade Research Associationの基準:

    • Jockey Vest Document M6-3

  • オーストラリア基準:

    • Standard 1.1998

2022年夏以降、米国ではHISAが制定した規則に則った鞭(写真を参照)のみが使用を許可されることとなります。また、許容される最長の長さは30インチ(76.2 cm)です。

現在、条件を満たした鞭は1社(www.rydersup.com)でのみ製造されており、その価格はひとつ95ドルです。なお、米国内では発注から配達までに10日前後(つまり、日本への配達にはそれ以上の日数)を要している模様です。注文に際しお好みの長さ、硬さ(しなやかさ)、色等がございましたら、まるがいレーシングまでお知らせください。手配のお手伝いをいたします。

昨年、「ProCush Flat Race Whip」も、上記のGT360と一緒に米国のレースでの使用が合法であるとの判決が下されました。 ProCush シリーズのこの特定のバージョンのみが許可されます。ご注意ください。